彼女が熱を出した。病院はどこも取り合ってくれず、家での療養に努めた。顔を赤らめ、無数の汗を流す様を見て、何度代われるなら、代わってやりたいと思っただろうか。
何か出来る事はないか。お粥を作ろうか、タオルを冷やしてやろうかとソワソワしていると、ふと彼女はぼくの手をギュッと握った。
「繋いでて」
それだけで良かったのだ。病気の時、無性に寂しく感じてしまうのは誰しもが一緒だ。
「眠るまで、待ってて……」
うとうとと微睡む様子を、横で優しく見守った。そういえば自分も昔、と過去を思い返す。
まだ小さい頃。病気になって眠りにつくと、母は起きるまでずっと手を握ってくれていた。あの時はとても安心出来た。見守られて生きているんだって、心が柔らかな気持ちで満たされた。
「ずっと待ってるよ。起きるまで、ずっと」
可愛らしい寝息が聞こえてくる。ぼくは、軽く微笑みながら熱に浮かされた彼女の寝顔を眺めていた。
ゆっくりおやすみ、元気になった君をまた見せてくれよ。
ぼくも瞼を閉じる。夢の中へと落ちていった。
2/13/2023, 12:31:20 PM