ふと目を覚ますと、私は小さな小屋の中にいた。
体を起こして辺りを見渡すと、そこは四方を壁に囲まれた小さな小部屋だった。四方の壁の一つに小窓があるだけで、あとは私の寝ている寝具が一つ。小窓は格子の枠にガラスがはめ込まれている。
酷く違和感を感じたが、その部屋には扉がないからとその違和感の正体に気づくのにはそこまで時間が掛からなかった。
私はゆっくりと小窓に近づき、両開きの窓を押し出す。
窓の外には小さな小川が流れており、小川の手前には男の子が一人で立っている。
すり減った金属の軋む音で彼はこちらを向いた。
彼は優しく微笑うと、小さく手を振った。
ー 彼はどこかに行ってしまう、行かしてはならない
衝動的にそう思った私は声を上げ、手を伸ばした。
彼は少し悲しそうな顔で小さく首を横に振った。小さく何かを呟くと、小川の方に振り返り歩き出した。裾が水に浸っても彼は構わず歩き続ける。
私は伸ばした手で顔を覆った。
ー 私の方こそありがとう。
私は小さく呟くと、手の隙間から雫がこぼれ落ちた。
さよならは言わないで
12/3/2023, 2:15:32 PM