誰よりも、ずっと(オリジナル)
幼馴染がいる。
隣の家に住む、一つ年下の女の子だ。
彼女は幼い頃から活発で、僕は良く振り回された。
明るくて可愛くて、守ってあげたくなる子だった。
お互い鍵っ子だったので、親公認で僕が良く面倒を見ていた。
誰よりも、ずっと、彼女を大事にしてきた。
家族のようなものだった。
高校も幸いにして同じになった。
行き帰りで良く一緒になったので、周囲にもニコイチ扱いされていたが、悪い気はしなかった。
誰よりも近い位置にいると思っていた。
なのに。
彼女は友達からサッカーのチケットを2枚入手した。
自宅の2階、向かい合う窓の向こうで彼女がそう言うので、当然に僕を誘ってくれるものだと思っていた。
彼女は頬を染めて、
「サッカー観戦、瑛人と行こうと思って」
と言うので、耳を疑った。
「瑛人?」
「ほら、前に話したじゃない?私のクラスのサッカー部の子。初めてだから色々教えてもらえるだろうし、誘ってみたら行きたいって言ってくれて!」
僕も、インドア派とはいえ、サッカーのルールや選手くらいわかる。
彼女に説明できるくらいには。
でも、そういう事ではないのだろう。
わかってしまった。
「そう。晴れるといいね」
僕は動揺を隠しながらそう言って、部屋の窓を閉めた。
強制的に会話終了だ。
彼女から誘われなかった事にショックを受けた。
彼女の一番が自分でなくなりつつある事実を受け入れがたい。
兄が妹に思う気持ちだろうか。
どちらかというと父が娘に感じる気持ちかも。
否。
自分を誤魔化すのはやめよう。
僕は彼女をそういう意味で好きだったのだ。
自覚するのが恥ずかしくて、失敗が怖くて、考えないようにしていた。
その結果である。
僕の恋は、始まる前に終わったのであった。
4/9/2026, 11:01:18 AM