喜村

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 あなたは私をよく撫でてくれた。
たまに鬱陶しくて、それを私は避けていた。

 飼い主とかならいいけど、私は野良。優しくされる筋合いはない。
 でも、あなたがよくもってくる、あの◯~る、あれはずるい。あれがほしくて、私も私であなたの元へとよってしまう。

 私があれを食べている隙をついて、私のあちこちを撫で回す。
いや、ゆっくり落ち着いて食べさせて下さいよ。

 ふふふ、と、あなたは笑った。
愛おしそうに、何やら機械でぱしゃぱしゃと私を撮っていた。
子猫ならまだしも、この世に生を受けて5年以上の私をそんなに撮影して、何が面白いのだろう。

 またくるね、とあなたは言った。
また◯~るをよろしくね、と手を振るあなたに向かって私はないた。

 次の日は来なかった。また次の日もこなかった。気付けば一週間ほど来ず、吐く息が白くなるくらい冷え込む季節になっていた。
 野良人生もそこそこ経験しているので、食べ物に不自由はしていないのだが……

 寒い。

 季節柄も寒いのだが、何故だろう、一人になれているのに、心も寒い……?

「ごめんねー! テスト期間中で来れなかったー!」

 忘れた頃に、あなたはパタパタと駆けてきた。

「寒くなってきたから毛布持ってきたんだ~、木の側において置くね! ここが君のポジションだよね?」

 お、おう、よく分かっているじゃないか。
そうそう、その久々の◯~るも待ってました。
 私はあなたにすり寄る。

「かわい~!」

 一人でも生きていけると思った。
でも、あなたから貰える、エサも毛布もないと寂しいと気付いた。
いや、モノだけではなく、その撫でくり回す手からは、温かなモノを感じていた。これが、愛情、なのだろうか?

 私は、にゃあとないた。


【愛情】

11/27/2022, 10:19:12 AM