月に願いを
肌寒い風。
顔は見えず、声は届きも響きもしない夜に、
偽りの願いをかける。
「世界平和を願う」というくだらない願いを。
とんでもないエゴイストだな。私は。
「あはっ」と、自分を嘲笑う。
純粋さの欠片を持たない、人間の屑の私には、求めるしかできないのだから。
けれど、私がひとつ願うならば……
この夜が続いて欲しい。朝が来て欲しくない。
なぜなら、静かな場所が好きだから。そんな理由だ。
無かったとしても、理由なんて後でつければいい。
理由なんて、そんなものだ。
5/27/2022, 4:16:23 AM