月龍

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『キキーッ!!!』

車の大きなブレーキ音が聞こえたかと思い聞こえてきた方を振り返る。
その車は俺の右側から此方へ突っ込んできた。

(あ、これ死んだな)

そう思うと、急に時が止まったように世界が変わった。頭の中に流れ込んでくるのはあの遠い日の記憶たち。保育園の記憶から、小学生、中学生、大変だった高校生の記憶がフラッシュバックする。

頭の中に鮮明に映るのは、俺が所属しているアイドルグループのメンバー。高校生で暗い世界に居た俺を、救ってくれた2人。仲間のアイドル達も浮かび上がる。

(……また、迷惑かけちまう)

時の止まった景色が再度色を増してくる。そして、俺は初めて車に轢かれた。頭に強い衝撃が走る。

(ファンの笑顔をもっと見ていたかった……)

俺は諦めたように目を閉じた。

7/17/2024, 11:42:21 AM