No.19『ウエディングベル』
散文 / 恋愛 / 掌編小説
クリスマスを目前に控えた日曜日。めいっぱいお洒落をしてイルミネーションで溢れる街中をひとりで歩く。本当は自分と幸せになるはずだったひとと親友の幸せな姿を見せつけられ、それでもわたしはめいっぱいの祝福の拍手をふたりに贈った。
「なにが幸せにします、よ……」
去年までわたしの恋人だったひとを親友がまず好きになり、次いで親友が気になり始めた恋人が親友を好きになってしまった。ごめんなさいとふたりから謝られた時は呆然としたが、そのまま恋人関係を続けられるはずもない。
結婚の約束もまだの恋人とわたしだったが、クリスマス頃には……、なんて思っていたのだ。なのに、親友を好きになって親友と付き合い始めた恋人は、わたしにじゃなく、付き合い始めたばかりの親友にプロポーズをしたのだった。
親友は恋人、いや、元カレが両親に結婚の挨拶している音声を寄越し、ごめんね、彼と幸せになりますとのたまった。わたしは結局、ふたりの結婚式に参列し、ふたりに祝福の拍手を贈ったのだ。
いつか教会でウエディングベルを鳴らすはずだったのに。式の帰りに寄った居酒屋に、やけ酒を注文するための卓上ベルの音が響き渡った。
お題:ベルの音
12/20/2022, 11:46:42 AM