wtプラス、819プラスネタ

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『私の宝物』という文字を指でなぞる。当時の自分のことなんて覚えていない、いったい何を書いたんだろうと次のページを捲る「猫って…」「ん、どうしたの?」呆れたように笑えば、隣の彼女が時枝の手元を覗き込む。歪な字で『ネコ』と書かれた横に、猫らしきイラストが並ぶ。きっと自分が描いたものだ「この時から猫、好きだったんだ」彼女の傍らにはアーサーととみおが気持ちよさそうに丸くなっている。いつの間にか俺よりも彼女に懐いてしまった「私の知らない充を知ってるなんてずるいぞ」呑気に眠るアーサーに恨めしい視線を送る彼女に頬が緩む「すっかり俺より君の隣が心地良いみたいだね」「でも充がいない時はベランダに向かってよく鳴いてるよ」先のベランダを指差して、その光景を思い出すように微笑む彼女の視線を追う「さてと、あともう少しだね、頑張ろっか」二匹の猫に気を遣いながら彼女が立ちあがろうとするので、もう少し、とその肩に頭を寄せる「珍しい」「俺も甘えたくなることくらいあるんだよ」春の日差しがカーテンの隙間から覗く昼下がり、小さなあくびがついて出る。つられるように彼女も口を開け、お昼寝しちゃいそう、と呟く「私の宝物はね、充とアーサーととみおとの、この毎日かな」「先に言っちゃうなんてずるいなぁ」ちょっとだけ、と目を瞑れば瞼の向こうに幸せの色が見えた。

大切なもの

4/2/2024, 2:09:22 PM