NoName

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こんどいっ・・
僕のとんまな口がやっと絞りだした言葉を電車の発射を告るブザーがかき消していく。
かき消された僕の言葉を拾おうと彼女の口元が言葉をつむぐ時には、無機質で恨めしい壁が、僕と思い人の間に立ち塞がっていた。
車掌のぶっきらぼうなアナウンスが
僕と彼女の最後のお別れを告げているように聞こえた

ああっ・・・

僕の間の抜けた後悔の叫びは無機質な鉄の中に飲み込まれた彼女には届く事なく
僕と彼女を引き離してしまった。

僕は燃えかすみたいになって電車の行った先を名残り惜しく見つめ続けた。

あれから数十年…
あの時、ドアの窓越しに見えた彼女の口元が何かを紡いでいたのを未練がましく思い出しては、
電車の去った先を目で追ってしまう。

また・・・巡り会えたなら。






10/3/2024, 12:27:53 PM