あにの川流れ

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 ダイニングテーブルは小さめ。
 ちょっと狭くてお料理が載らないときもあるけれど、きみの手はすぐに取れるしきみもぼくの存在を確認できるから、とっても気に入ってる。……ちょっと狭いけど。

 サクッて食感。
 バターの香りが広がって、鼻を抜ける頃にはサクサクはとろとろになって消えちゃう。コーヒーミルクなんていっしょに飲んだら、もうしあわせ満点。
 きみってばほんと、何でもできるんだから。

 ふふ、って空気といっしょに笑う声。
 きっときみは気づいてない。
 ぼくは気づいちゃった。

 「あのね、そんなに見つめられるとね、ぼくに穴が開いちゃうよ」
 「おや、目は開けておりませんよ?」
 「きみはそれがデフォでしょ? だからね、見つめられてるも同じ」
 「あらぁ」

 座ったままのきみの手がぼくの顔に触れる。
 ぺたぺたさわさわ。ぼくの顔の上で踊るきみの手がくすぐったくて、笑っちゃう。
 眉根を寄せて口はきゅ、って結んで。
 すっごい真剣。

 されるがままに。

 「あら大変」
 「なあに」
 「あなた、お顔にクッキーがついていますよ」
 「ゔぁ⁉」
 「ふふ、その下に穴を隠しているのですか?」
 「ちがっ……、もう!」

 カァッと顔が赤くなる。
 そしたらね、きみってば手の甲で頬を撫でてくるの。それでまたくすくす笑う。こらえ切れなくなったのか、ぶわっと花が咲くようにお顔を緩めて。

 「あはは、そんなに照れなくても。お顔が熱くなって、茹だって。ふふ、あなたのお顔は聞いてても触ってもころころ変わってすてきですよ」
 「もう! もう、からかうのなし!」
 「本当のことを言っているだけですよ?」
 「ゔぁあ! きみってばたまにいじめっ子!」
 「あらぁ」

 さっさときみの手をどけて、ナフキンで口を拭う。そしたら欠片もついてなかったの!
 死角!
 不覚!
 きみってば本当。今日はいじめっ子の気分なの⁉

 ぼくだってきみを穴が開くまで見つめてやるんだから、って思うんだけれど。
 そんなことお見通し。
 きみは涼しい顔をしてきれいな所作で、まるで優雅にアフタヌーンティー。きみは人一倍、自分に分からないところをだいじにする。それがまるで当たり前のきみの事象みたいに。

 だからね、仕方ないんだよ。
 ぼくがきみを前にしてあたふた百面相しちゃうのも、きみを見つめててそれを無意識に分かっているきみに目を泳がせちゃうのも。
 
 今度はきみの手をあたふたさせてやるんだから!




#見つめられると



3/29/2023, 4:03:30 AM