【旅路の果てに】
旅は始まりが良い。
果ては大して面白味はない。
友人たちとの旅は大概こんな感じである。
行きは揚々。
あの場所に行こう、あれを食べよう、あれを買おうなど夢は無限である。
実際観光地へ行くと気持ちは晴れやかとなる。
ひとりも良いが、このようなときの友人との会話はまた格別である。
泊まる旅館やホテルは4人が集まれば遊び場となり、狭い部屋も賑やかとなる。
問題はその後の果てである。
皆疲れきり、車中は死へと向かうように沈黙である。
私はまだ生者であるのだが、皆に語りかけても返事はない。屍のようである。
旅は道連れというがこんな道連れは真っ平ごめんなのだ。
あとはお家に帰るだけなのだが、本当にこの時間はつまらないの一言である。
運転してもらっている友人には悪いが、心なしかこの車のテンションも低い。
吹かすエンジンも力が抜けており、ブレーキは眠る寸前である。カーナビの声も弱々しく、ぷんすかと車両は大きく揺れる。
旅の思い出を噛み締めるわけでもなく、眠っているわけでもない。
この不思議な時間はいつどの旅でも大なり小なり訪れる。
私はこの時間が嫌いなのだ。
お家に帰るまで私は旅の気持ちを持っていたいが、周りがこうなるとどうしようもない。
皆天下一武道会に出た後のように疲労困憊であるのだ。
自分の力では何ともできない無力さを知る。
私にとって旅の果ては虚無である。
私は思考を重ねるがいまだに解を提示できない。
体力の問題なのだろうか。
皆まだ20代のはずだが、本当は60代くらいなのかもしれない。
ならばしょうがないであろう。
1/31/2024, 12:13:52 PM