大狗 福徠

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透明
草臥れた体で水中へ沈む。
深く深く、澱みさえ無い奥底へ身を委ねる。
沈むたびに透明へ近づいているような気がする。
己の中の澱みを吐き出す。
真黒に染まっては薄れ消えていく。
繰り返し、繰り返し、草臥れた体が再び色を持つまで。
醜い色に染まったならば、その身を起こし水から上がる。
透明であることは美徳だ。
何ものにでも合わせ、同調できる。
然し、それでいては己がない。
私は美徳では生きて行けない。
くすんだ色のついた私は、しかして再び己を持った。

3/14/2025, 6:45:54 AM