作品44 イブの夜
“そいえば彼氏出来たよ!”
昔の仲いい友達たち五人で作られた、一つのグループライン。そこにはかつて、想ってしまっていた人がいた。
その人からの衝撃的な告白。
“まじで?” 、 “おめでとう” 、 “最初はお前だったかー” とか言ってみんなが喜んだり、茶化したりしてる中、私だけ何も言えなかった。
なんてことは全くなく、私もみんなと同じように “おめでとう!” と送れた。ついでに “浮気は許さないよ!” とも送った。
その人とは冗談で結婚しようねとよく言い合っていて、みんなからはカップルみたいに仲いい人扱いされていた。だからあの返しは、当然みんなの想像にあわせて送った。
でも別に、理由はそれだけじゃない。多分、ラブラブ扱いされていなくても、おめでとうとは送れたはずだ。
なぜなら悲しさよりも、納得が来たからだ。
ずっと前から。あの人を意識し始めたときから、この想いは叶うわけ無いとわかっていた。
でも。肩に触れるたび、手に触るたび、抱きつかれるたび、優しくされるたび、贈り物をされるたび、笑い掛けてくれるたび。もしかしたら叶ってくれるんじゃないかなって、そう、思ってしまった。そしてすぐに、そんなわけ無いって諦めをつかせて。でももしかしたらって祈って。何度も何度もそれを繰り返して。
正直辛かった。みんなみたいに、特別扱いじゃない普通の友達としてでも、好きになるでもなんでもいいから、ただ普通になりたかっただけなのに。それだけなのに、こんな苦しくなって。
何度もこの思いを捨てようとしたけど、できなくて。だから、進路を決めるとき、あの人から遠く離れられる場所に行くことにした。そのことに対して辛いと感じているのか悲しいと感じているのかは、よく分からなくなっていた。それぐらいぐちゃぐちゃだったんだ。
それでもたまに、昔から仲の良かった五人で遊びに行ったりした。退屈はしなかったけど、すっごい楽しかったといえば嘘になる。
そこではあの想いには、重い蓋をして、深いところに沈めてたから。あわよくば、この想いが死んでくれることを祈って。
けれど、死ぬことも、消えるも、何もなかった。
そう言うことがありながら過ぎていったこの数年。それ越しに送られたあの言葉は、やっとこの想いを捨てられるものさせてくれた。
でもやっぱり、今までの気持ちを無駄だったと一蹴して一気に捨てるのは、きついな。せめて、友達のままではいたい。
筋の通っていない、意味の通じない気持ち悪いをぐるぐるぐるぐる考えていると、何となく一人でこの気持ちを持ってるのが辛くなってきて、それを和らげるためにネットに呟いた。
“昔好き?だった人と話してたら、彼氏できたっていう報告をさっきされた。こうなるっていう結末は分かってたけど、いざこうなると、ちょっと辛い。”
送るとすぐ何人からか反応があった。さっと目を通す。
“おっと?まさかの彼氏笑”
そういうのばっかだった。ああ、そうだよな。そう思うよな。やっぱり、異常だと思うよな。なら叶うわけないよな。
辛さを和らげるために行った行為が、余計辛くさせてきた。涙が流れて出てきた。
せめて男で生まれてたら。せめてあの人と恋できる資格があれば。この想いから目を背けることができてたなら。
いくらたらればを言ったってしょうがない。来世にわずかな期待をかけて生きよう。
そこでようやく、やっとちゃんと、諦めをつけることができた。
やっとスマホから目を背けられた。
気づけば部屋は真っ暗で、外からイルミネーションの光と、クリスマスの陽気な音楽が聞こえてくる。
スマホが震えた。通知を見ると、みんながメリクリと言い合っていた。クリスマスになったらしい。
日付が変わったその瞬間に、小声でメリークリスマスと言った。
誰に届くかわからないけど、贈る。私からのプレゼントは、もう少しでなくなるこの想いだよ。
⸺⸺⸺
メリークリスマスって25日の午前中しか言っちゃだめらしい。
私(女)→あの人(女)→彼氏
でも
私(女)→あの人(男)→彼氏
でも
私(男)→あの人(男)→彼氏
でも、なんでも好きなように解釈してください。
誤字脱字4つくらい見つけたけど許してください眠くて直せない。
12/24/2024, 4:04:07 PM