中学時代からずっと友達のあの子と、今日も屋上で一緒に喋っていた。
「今日の授業難しかったね」とか、「この動画面白かったよ」とか、いつものような他愛もない会話。
でもそれが、毎日の癒しに、楽しみになっていた。
あの子は昔、虐められていた私を庇って怪我を負った。
「考える前に動いちゃって…」と、後であの子は言っていた。
その日から、いじめの対象はその子に変わってしまった。
クラスの一軍たちに、毎日のように虐められていた。
その子は思っている事が顔に出る子だったので、嫌がる姿も面白かったのだろう。
それでも、いつも笑顔で、一緒に昼ごはんを食べてくれた。
初めは心配の言葉を掛けていたが、「心配すんのやめて?私は強いんだからね!」と言われてしまい、それから心配を口にするのは辞めた。
ある日、あの子にしたLINEが数時間返ってこなかった。
いつも10分以内位でかなり早く返してくれるので、おかしいな…と思った。
途端に、ある考えがよぎった。
────まさか、まだ外にいるのではないか。
もう外もすっかり暗いし、可能性がある、というだけの話だが、家の近くだけでも…と懐中電灯を持ち探しに行った。
15分後。
あの子のお気に入りの丘に探しに行くと、あの子が寝っ転がっていた。
私は血の気が引いて、急いで駆け寄った。
「あ……えへへ、ごめん、ぼーっとしてた」
ぼーっとって…どれだけ心配したと…!
幸い体温が少し低いだけで無事だった。
その日はすっかり日が暮れて、あの子の家も遠かったので、自分家に泊めた。
その日から、あの子は少しづつ元気が無くなっていった。
笑顔が輝いていたその顔からも、笑顔がなくなっていった。
大丈夫?と聞いても、「だいじょぶ。」と、ロボットのような返事が返ってくるだけだった。
○○○○年○○月○○日。
お昼休み。
あの子が私のことを屋上に呼び出した。
どうしたの?と聞くと、「…ちょっと聞いてくれる?」と返ってきた。
「私さ…もう虐め耐えられない。いつもいつも、心がどんどん傷ついていって…。だから、ずっとずっと考えてたんだ。…居なくなれば、楽になれるだろう、って。」
え…?
それって…
っだめだよ…!
あなたがいなくなったら、私は何のために頑張ってることになるの…?
「あたしはもう決めたの…!こうすれば…私もあなたも楽になれる…!」
私の止める言葉も聞かず、あの子は私の腕を引っ張りながらフラフラと柵の方へ歩いていった。
「…最後まで、私を見てて。」
だめ…!
私は動揺しながら、あの子と柵の間に立ちはだかった。
「今までありがとう。じゃあね。」
そう言って、あの子は私のことを押した。
──────え
──────―――――――――――!
「これでもう、虐められないね。今まで私を庇ってくれて、ありがとう…!」
6/26/2024, 11:43:09 PM