300字小説
相棒
「昔、この辺りの街に大金持ちの男がいたんだ」
俺と一緒に商隊を組んで旅をする相棒はいつも酔うとこの話をする。
「奴は金の力で望むものを何でも手に入れた。そして最後には魔神の壺まで手にしたんだ」
その男は魔神に、どんなに金を積んでも手に入らないもの……不老不死を願った。そして、願いが叶った男は初めは面白おかしく暮らしていたが、やがて全財産を街に寄付して居なくなったという。
「……今、何処にいるんだろうな?」
「さあ、金よりも大事なモノを手に入れて意外と楽しく暮らしてたりしてな」
相棒の目がおかしげに俺を見る。その目が焚き火の火の加減で物語の男のように青く見える。
それに気付かないふりをして俺は笑って頷いた。
お題「お金より大事なもの」
3/8/2024, 12:49:42 PM