彩竜帝 里乃亜

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お題「優しくしないで」

 とある施設の一つの檻の中に一人の少女がおりました。
 少女は悪魔の子だと村人から言われ、囚われておりました。
 毎日、毎日、暴力などを振るわれ続けました。
 
 そんなある日救世主が現れました。
 彼は村人から高額でその少女を買い取りたいと言い出したのです。
 もちろん、村人達は口々に言いました。
 「あいつは悪魔の子、忌み子だ」と。
 それでも救世主は意思を曲げませんでした。
 とうとう少女は買い取られ救世主の屋敷にやって来ました。
 少女は思いました。
 「どうせ、この人も私を忌み嫌うのだろう」と。
 しかし、そんなことはありませんでした。
 救世主はいくら周りの人々から「そいつは悪魔の子だぞ?」と脅されても
 彼女を可愛がり続けました。
 ご飯を上げて、風呂に入れ、服と住む場所を与えました。
 
 そんな生活が数週間続いたある日でした。
 少女が言いました。
 「なんで私に優しくするの!?今まで通りの生活で良かったのに...」
 少女は涙声でそう言いました。
 理由を問えば、村人達は少女をいじめるときだけは嬉しそうに笑い、
 その笑顔は自分が居なければ見られないから、この時だけは役に立てるから、と
 なんとも、無惨な理由でした。
 そんな言い分を聞いた後でも救世主は彼女を可愛がりました。
 ずっと、ずっと、ずっと、少女が息絶えるそのときまで、
 自分が居なくなるそのときまで...

5/2/2023, 7:01:54 PM