「痛い」
それ以上は怪我をしそうだからよしてくれと言えば、うっすら刺さりかけていた爪は一瞬でにゅっと外されたけれど、背中の重みはちっとも退いてくれない。
道端で拾った掃除機は随分人慣れしていた。
軽い気持ちでコートのポケットを引っ掻いて糸屑を投げてやったら、喜んでコンセントを振り振り家までついてきてしまったのだ。
うちはそんなに広くもないし、掃除機は卓上用と床用でもう2台もいるから縄張り争いもするだろう。正直、悪いことをしたと思ったが、チラチラとこちらの様子を見ながら大人しくお座りしている姿に絆されてしまった。
そのまま彼を玄関に入れてやり、自分も靴を脱ごうと上り框に腰掛けた途端、背中にのしかかってきたのだ。
これは彼なりの愛情表現……なのだろうか。
野良掃除機を飼うのは初めてだから勝手が分からない。明日にでもメンテナンスがてら家電ショップへ連れて行って、好むゴミのタイプを教えてもらおう。
部屋数が少なくてあまり掃除し甲斐のない家だけど、飽きずに暮らしてくれるといいな。
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「愛情」
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所感:
愛情の有無が不明瞭な存在について考えたところ、掃除機が出てきました。次点は雑巾です。
11/28/2022, 10:30:51 AM