徒花

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「寒さが身に染みて」

冷たい

痛い

苦しい

辛い

彼処に行くと体が強ばる

体温が下がり凍えるように指先や足先が
紅く染まり、手を握たり開いたりしてみても
感覚がなくなる。

背筋が凍る思いで重たく感じられる戸を開ける

あぁ、これだ。

冷たい視線、拒絶するような顔、静まり返る空間

震えそうになる体をなんとか留めて私は1歩を踏み出す。

下を向いていよう。

自分の机までの距離がとても長く感じられた

机に座った時、思わず声が出そうだった

机の中が酷く荒らされていた。

あぁ、またこれか。

一瞬、驚いてしまったがいつもの事だった。

渡されるプリントはどこか破れていたり、くしゃくしゃになっている。

机の中にあったはずのプリントは床に落ち、踏みつけにされる

彼処に持っていく私のものは何処か汚れていく。

物を隠されたりもした。

机を離されたり、掃除の後、私の机だけ元に戻ってなかったり。

陰口、悪口なんて当たり前。

そんな中、放課後あの人達にトイレに呼び出された。

何かあるだろう事は分かりきっていた

それでも従ってしまうのは
後々どうなるか知っているからか、勇気がないからか、自分でもよく分からない。

トイレに着くと、何やら盛り上がっている様子の彼女達が私の存在に気づくとニヤニヤと不気味な笑顔を向けてきた。

何やら喋っている彼女達を置いて私は限界だった。恐怖、不安色んな気持ちが渦巻いてまた体が震えそうだった。

何より今は放課後。生徒は帰ってしまっただろうし、先生の見回りも部活後だろう。

部活もあるしは早く要件を済ませないといけない。そう思うと不思議と落ち着けた。

そんな私を置いてひとしきり話し終わったのか
彼女達が嘲笑っている中、私は状況を飲み込めずにいた。

どうしよう、恐怖のあまり彼女達の話しを聞いていなかった。

何をするのか、彼女の取り巻きの1人がバケツに水を組み始めた。

そんな取り巻きを置いて彼女が私に向き直り
トイレの個室に入って個室の鍵を閉め座るように言ってきた。

私は疑問に思いながらも個室の1つに入り
鍵を閉め、座ると外から聞こえてくる彼女達の声がよく聞こえて先の恐怖のばかりが募った。

しばらくして水を注ぎ終わったのかキュッと蛇口を閉める音がするとガタガタと別の音がする。

しばらくして、ガタンと音がすると体が一気に冷えていく感覚に襲われた。

思わず声を上げる。

水をかけられたのだ。

彼女達の笑い声が頭の中に響いてパニックだった。

そんな私を他所にパシャッという機械音が聞こえる。

思わず頭が真っ白になった。

しかもその機械音は上からしたのだ。

思わず上を見上げると隣の個室から顔を出しスマホを持って可笑しそうに、面白そうに、蔑むように電子音を響かせる。

あとから考えれば、なんでスマホを持ってきてるのかとか、どうやって覗いてるのかとか、聞きたいことも言いたいこともいっぱいあった。

でも、やられた事の絶望感で頭がいっぱいだった。

真冬の水は酷く冷たくて、それがまるで彼女達のようで心身ともに冷たさが刺さるように侵食していった。

1/12/2023, 11:03:22 AM