六月の帰路

Open App

熱くないアスファルトの上を歩いている
自動販売機の横には空き缶が置いてあって
通る道にはスナックパンの空き袋が
誰かに踏まれたように、縮んでいる

そんな奴たちを風景として
僕は君の横に並び
信号の赤色が変わるのを待っている
君は花歌を歌い
僕はそれをただ聴いている
なんという歌だろうかと、問いかけてみる

君は僕に雪解けのような曲を伝えてくれる
僕は頷く。
君は花歌の続きを奏でる
ダークブラウンのその目はとても大きい
目玉がとび出そうなくらい
僕のポケットに入るくらい

君の結膜は夕焼けに照らされて、
白色が蜜柑に染っている

それを手に入れることが出来るのなら、
ぼくはその澄んだ瞳を、ずっと
眺めることが出来るんだと思う

あとどれくらいなんて
考えていない
考えるだけ、多分無駄だった

君の澄んだ瞳は、
僕のポケットには入りたくないと言う
僕は熱いアスファルトを踏んで、
自動販売機なんて無くて
スナックパンじゃなくて、矢筈豌豆が落ちている
でも、あの蜜柑だけは同じで
それだけが同じだけれど
蜜柑色の君の結膜は思い出せなくて

花歌は聞こえずに
君はどうやら枯れてしまったようだった

7/30/2022, 1:42:50 PM