世の中は 夢かうつつか うつつとも
夢とも知らず ありてなければ
──この世は、夢か現実か。
現実とも夢とも分からない。
在って無いのだから。
古今和歌集の詠み人知らずの歌。
無常感や虚無感がにじんで、ちょっとカッコいい和歌である。
夢と現実の「夢」が睡眠時の夢や見えない世界を指しているとき、対して現実は現(うつつ)、覚醒時に見ている世界のことになる。
上の一首は、諸行無常の仏教的な歌ともとれるが、詠み人が個人的な経験からその境地に至った可能性はある。
何もかもが存在しているのに存在していない、と思うまでに何があったのだろう。願望や理想を表すほうの「夢」が崩れ去ったのかもしれない。
現代人の自分も、精神的に疲れてくると現実感が失せてくる感覚なら分かる。すべてが不確かで、すべてがどうでもよくなる感じ。
「どうせみんな消えるんだから」
実際にはもっと崇高に詠まれた歌なのだろうが、千年以上たっても実は人の感覚はそんなに変わっていないのではないかと、そんな気がしている。
『夢と現実』
12/4/2023, 10:45:44 PM