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「もう一つの物語」

「熱闘甲子園」という番組が、毎年夏に放送される。

その名の通り、その日甲子園で行われた手に汗握る高校野球の試合を、ダイジェストで見せてくれるのだ。

でも私は、この番組の作り方に少し不満を抱いている。

1-2回戦あたりだと1日4試合。その全試合をダイジェストで放送するのだが、私が不満に思うのは、その攻防の合間に、ドキュメンタリー風のストーリーが語られることだ。

病気で出場出来なかったチームメイト。小学校から同じチームで甲子園を目指し、夢を叶えたバッテリーなど。皆それぞれの思いを胸に、ここ甲子園で戦っているのだ。頑張れと応援せずにはいられない。

ただ残念なことに、その感動の物語は、勝者側の話がほとんどだ。惜しくも敗退してしまった高校の物語はなく、とって付けたように、宿舎で涙を流しながら監督の話を聞くシーンとか、「来年また来ます」と抱負を語る選手のインタビューが数分流れるだけだ。

プロ野球ならそれも分かる。勝てば何度も決勝打のリプレイが流れ、ヒーローインタビューもある。CSで負けてしまった阪神は、矢野監督のコメントしかない。プロはそれほど厳しいのだ。

だが高校野球は違う。敗者にも仲間と共にここまで勝ち上がってきた物語があり、それは勝者の物語と比較しても、優劣をつけれるのもではないはずだ。

ドキュメンタリー風に語るのであれば、勝者敗者を同じように扱って欲しい。放送時間の関係で両方できないのであれば、試合の内容を公平にダイジェストで流し、最後に古田敦也が、「勝敗を分けたポイント」とかをコメントするだけにすればいい。

来年も「熱闘甲子園」を観ると思う。その時は勝者敗退とも、平等に扱われることを切に願っている。

10/29/2022, 4:14:50 PM