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宮島歩看護師 × 佐々木貴弘小児科医



私には、まだ見ぬ景色がある。
過去、交際していた人とはその景色を見られなかった。
初めての人だったから?
その次の人も同じだったのは、私に経験値が足りないせい?



「歩(あゆみ)って、ずっと呼びたかった」
真っ白なコットンのバスローブを着た佐々木先生に、同じバスローブを着た私は抱きしめられた。
同じホテルの、同じムスク系のボディソープのはずなのに、どうしてこうもセクシーに香るのだろう。
見上げたら、先生のしっかりとした鎖骨や喉仏がある首すじ、形の良い顎が目に入った。
「佐々木先生…綺麗…」
「貴弘って呼んで」
私の頬に手を添えて懇願するように言われて、「貴弘さん、」と呟いた。

「歩、ずっと欲しかった」
低い声音で囁かれて、私の身体はふるりと震える。
「緊張してるね」
「そう、かもしれません、」
貴弘さんはいつも誤魔化されないから、私は素直に心情を吐露する。
私が辛いとき寂しいときには貴弘さんは私に寄り添いたくて。
いつも気の済むまで泣かせてくれる。
貴弘さんはとても優しい。優しいから、私は貴弘さんを信じられる。

「でも、私、貴弘さんのことをもっともっと知りたいです。…だめ、ですか?」
貴弘さんの両目が見開かれて、一瞬言葉に詰まる。
「良い。良いよ」
一気に口を塞がれて、食べられてしまうかと思うほど濃厚な大人のキスをされる。
貴弘さんにこんな情熱的な一面があるなんて知らなかった。
頭がクラクラして立っていられない。
と思ったらベッドの端に座らされて、優しく体重をかけられて私の上に貴弘さんの身体が重なる。


ベッドの足元をほんのり照らすライトの薄闇のベットルームで、
二人の吐息が溢れ落ちていく。
愛しか感じられないこの行為の先。
まだ見ぬ景色はきっとある。

好き、愛してる、歩。
たくさん囁かれて、私の心と身体が満たされる。
貴弘さんのことが、どんどん好きになる。
好き。大好き。
目尻から涙がこぼれ落ちるのは、貴弘さんの愛がどこまでも伝わってくるから。

繋がった場所がじんじん痺れて、身体中に熱く拡がっていく。
そのくせ頭は霞がかかったようにクリアではなく、貴弘さんに溺れている。

まだ見ぬ景色はこの愛の先にきっと。
どこまでも深く繋がったまま訪れる感覚のその先にきっと。

私は貴弘さんのことをもっともっと知って……

その景色はきっと、貴弘さんとしか見られない。




まだ見ぬ景色

1/13/2025, 11:32:36 AM