白糸馨月

Open App

お題『つまらないことでも』

 子供の頃、とある剣士に弟子入りしていた時期がある。その剣士は魔王を倒したメンバーのうちの一人だ。
 ただの憧れから「剣士様みたいに強くなりたいです」と言って、剣士もこころよく受けてくれた。
 だけど、その修行内容はとてつもなくつまらなかった。
 倒される練習と、素振りをするだけ。たまに剣士に打ち込むことをするだけ。いっこうにモンスターと戦わせてくれない。
 だから一回、剣士の目を盗んで村の外へ出て魔物退治に出かけたことがある。ザコだと思っていた魔物に苦戦した。
 倒される練習を怠ったからダメージが余計に増えるし、剣を振るパターンも覚えきれておらず敵に対処出来なかった。散々ダメージを食らって死にかけた。
 師匠が俺を助けに来てくれなければ俺は今この世にいないだろう。
 あれから心を入れ替えてひたすら同じことを繰り返し、実践もさせてもらえるようになり、いつしか俺は師匠のおかげで近くの王都の騎士団に所属するようになった。
 つまらないことでも、鍛錬を地道に積んだ成果である。その結果、今は騎士として様々な人を助けることができているのだから。

8/4/2024, 11:48:06 PM