「救難信号」
綺麗だ。
今までじっくり眺めた事なかったけど、こんなに綺麗だったんだなぁ。
特にここは、大気を汚すものが何もないから。
余計にそう見えるんだろうなぁ。
この光景は何度も、数えきれないくらい眺めてきた。
けれども、綺麗だと感じた事はなかった。
わずかな光がともるだけの真っ暗闇の夜の空は、不安感を膨らませるだけだったから。
いつもそこに、探すべきものがないか、必死になって目を凝らしていたから。
心配から解放された今は、とても綺麗に感じる。
私は視覚の隅にうつる、宇宙船を見てそう思った。
宇宙旅行の際に、遭難して、この星に救命ポッドを使ってたどりついた。
でも、人がいなくてずっと孤独だった。
早く故郷へ帰りたいと思っていた。
救難信号は発信していたから、いつか人が助けにきてくれるとは思っていたけど。
やっぱり実際に見てみると、安心感が違うな。
私は「おーい」と叫びながら、船に向かって手を振ったんだ。
7/6/2024, 4:09:00 AM