サチョッチ

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彼女を庇って飛び出した先
僕はトラックに飛ばされた
朦朧とする意識の片隅で
周囲のどよめきがうっすら聞こえる

手元の気配が動き出す
彼女が僕の顔を見下ろす
閉じた瞼の隙間から
花びらのような紅が滴る

彼女のそんな顔を見るのは初めてだった
きっと僕はもう助からない
彼女はすぐに悟ったのだろう
今までずっと見開いていた
眼球のない赤い眼孔は
今は穏やかに閉じられて
口元に笑みを浮かべていた

僕の顔に雫が落ちる
癒えない傷を慰めるように
絶えゆく命への手向けのように
白く細い手に撫でられながら
僕は明けない夜を迎える

4/21/2023, 11:08:06 AM