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 お見舞いに来てくれた君を対面せずに帰した。
 風を移したら大変だし、申し訳ないから。
 ぐずぐずと布団に潜って、仕方ないと諦めた。

 夢にうなされて目が覚めた。
 全身が汗でびっちょりと湿っていて気持ち悪い。
 着替えなきゃと思いつつ、視界に入ったスマホを取った。
 暗がりの中、一人で過ごす心細さに耐えられなかった。

「待ってたよ、電話くるの」
「寂しい」
「だろうね。行くよ」
「いいよ、もう遅い」
「タクシーとばすし」
「寝汗でグチャグチャだから会いたくない」
「それで?」
「声聞いているだけで十分」
「それで?」

 君の優しい声に、私は縋りついていた。

「やっぱり会いたい」
「すぐ行く。あ、電話は繋いだままね」

 電話越しにガサガサと音がする。多分慌てて身支度してくれているに違いない。
 風邪を移したら申し訳ない。君にこんな辛い思いもさせたくない。だから来てほしくない。
 でも会いたい。

「好き」

 顔も頭も体もぐちゃぐちゃで、君に見せられたものじゃないけど。どこまでも優しい君に全て委ねてしまいたいと思った。



『風邪』

12/17/2024, 12:51:55 AM