(前回の続きです)
部屋の片隅で私は地獄に案内された
(…此処が地獄の私の居場所?)
私は死柄木弔…本名、志村転孤と地獄に行くために
転孤の身体を、わざと刀で彼に傷を付けた。
自分にとって地獄行きの切符になると信じていたからだ。
(死柄木………転孤を1人にさせない。彼と同じ地獄へ行くならば何だってする………たとえ、それが罪になるとしても)
その瞬間は、今でも鮮明に覚えている。
薄暗い部屋、彼の険しい表情、そして私の震える手に握られた刀。彼は抵抗しなかった。ただ私を見つめていた。まるで全てを受け入れる覚悟があるかの様に。
〇〇
『転孤ごめんね………でも、こうするしかないの…』
刀が彼の肌に触れた。そして、彼の肌が裂いた。私と胸に鋭い痛みが走った。それは、肉体ではなく心の痛みだった。
死柄木弔(志村転孤)
『〇〇、お前らしいやり方だな。でも後悔しないでくれよ』
その言葉に、私は涙を堪えることができなかった。
罪を背負い、地獄へ向かう道を選んだ私。
彼は、どこかに諦めた様に見つめていた。
(転孤、私は、これで貴方と一緒に行けれる…もう
離れ離れにならないよ)
地獄の扉が開き、私は再びその中に足を踏み入れる覚悟ができた。彼に付けた大きな傷は、私が選んだ地獄の道の証だった。それが私たちをもっと深く彼との絆になると信じていたから。
地獄に行く前、
既に私は18歳で相澤消太によって殺害された身。
転孤は、処刑される身になっており、
市中引き回しされては、公開処刑で斬首される。
死柄木弔、、、志村転孤は佐野万次郎と友人
処刑進行が行われている間、佐野万次郎は、
その事実を知らなかった。その日の午後
テテテ
『佐野万次郎様………死柄木弔の処刑が決まりました。
既に、その時が近づいており、貴方に知らせるべきだと感じて参りました』
佐野万次郎は、
『え?嘘だろ…ありえない…』
佐野万次郎は、その言葉を聞き言葉を失う。胸が締め付けられるように痛み息を飲む。
『転孤………どうして?彼は、あんなに強くて…』
使者は静かに首を横に振り
『彼は既に、打首、獄門を言い渡され、市中引き回しを経て処刑される城へと向かっています。もう、戻ることはありません。』
佐野万次郎は、あまりにもショックを受けて強く拳を握った。
『転孤…』
死柄木…転孤が処刑されるという現実が、あまりにも酷すぎて佐野万次郎は、受け入れなかった。
その頃の転孤は、市中引き回しされる中、
周囲の市民たちは、無言で彼を見守っている人
罵声、低い囁き声、冷笑が漏れ聞こえ、罪の報いを当然視する者もいれば、彼がどんな経緯で
処刑されることになったのかを知る人もいたのだ。
そして、石を投げる人たちに悲しい笑みをする転孤。
(先生…お前のことは、幻滅したよ………)
市民たちは
『死柄木、あんなにも若いのに…』
『彼、何歳?』
『20歳だってよー』
『なぜ彼は、こんな道を選ばざるを得なかったんだろうか………』
『もしかして彼は、オールフォーワンに操られていたのかも………』
死柄木を哀れに思う人も沢山いたのだ。
『死が待っているんですって〜』
『処刑されて当然よ』
(先生…俺に罠をかけやがって………)
馬に乗せられて市中引き回しをしている間に彼は
ずっと俯いていたが、一度だけ空を見上げていたのだ。
死柄木弔と呼ばれれる理由
彼の前に立つと必ず[死]が訪れること
絵[柄]のように、彼が人を惨殺すると美しい工芸品に見えること。
[木]のように大きく振り捌くからだ。
そして必ず戦いが終わると死亡した人に対して般若心経を読み、死者を[弔]うからだ。
カッカッカッカ…
馬に乗り、市中引き回し
その先には、処刑台が待ち構えている
彼の表情は、今や無力で無言の講義みたいに瞳を閉じている。
拷問で受けた傷跡も、新たに縄でできた傷跡も
血も、滲み出ている。彼の手首には縄の食い込みで血が紫に変色しては細い血の筋が、指先へと流れ落ちていく。
処刑場に辿り着き
彼を見て涙ぐむ者も現れて、静かな啜り泣き声が響き始める。彼の生き様を非難する声も少しずつ途切れ、そこには青年1人が辿る最期を見守る哀惜が広がっていた。
『てんこ!てんこ!』
と、泣き叫ぶ佐野万次郎が転孤の最期を見守るために来たのだ。
『お前じゃないんだろ?オールフォーワンだろ!黒幕は!何でだよ!こんな目に…』
佐野万次郎の叫びは、物間寧人に聞こえて物間は
『処刑は、処刑です。黒幕がいたとしても、この人は、たくさん人を惨殺した殺人鬼です。
私は幽霊として転孤を見守りながら彼を抱きしめた。
(ん?この温かさは〇〇?)
相澤消太により俺は猿轡を強引に外されて
絶世の句を読んだ
『オールフォーワンに裏切られた。だが、
君が為尽くす心は水の泡消えにし後は澄み渡る空』
首と頸を出して大きな穴を見て小さく泣いて微笑む
グハァ!!………
俺は、斬首された
暗闇の中で私と転孤が再会する
『俺の心を支えてくれたのは〇〇だけだった』
彼女は優しく微笑む
だが、彼女と俺は地獄の中へと堕ちた
12/8/2024, 9:57:45 AM