遊びに行くと、いつもお菓子をくれる、坂の下のお姉さん。
大きくなったらお姉さんと結婚する。
そう言ったら、お姉さんはビックリした後、笑って「ありがとう、君が大人になるまで待ってるね」と言ってくれた。
嬉しかった。
嬉しくて、家までの急な坂道と長い石段をワーワー叫びながら駆け上がった。
家の台所にかかっているカレンダーを捲くって、一日ずつクレヨンで塗り潰しながら、大人になるまであと何日かかるんだろう、と指折り数えて考えた。
お姉さんは、次の年、あの夏の夜に、死んだ。
テーマ「失恋」
6/4/2024, 7:40:19 AM