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裏返し

「あれ、親父。シャツ裏表反対じゃね?」
夏休みを利用しての久々の実家への里帰り。茶の間で扇風機を一人占めしてダラダラを満喫中。
新聞片手に現れた父親の格好にツッコミ。
「なんだ、タクミ、お前知らないのか。リバーブルってやつだよ」
返ってきたのは的外れなドヤ顔。

いやリバーシブルな。知っとるわ。いやいやアレはそれ用に作られたものであって親父が着てんのはただのシャツだからな。タグ丸出しだからな。そもそも親父の服買ってんのお袋だろ。そんなリバーシブルなんて小洒落たモン買うわけねーじゃん。

頭の中を様々なツッコミが駆け巡り。

「…へー。親父、オシャレだね」

面倒くさくなり、笑顔で親指を立ててみせる。だろう、とこれまたいい笑顔で親指を立て出ていく父の背中を見送る。面白いし放っとこ。

数秒後、お袋の声が響く。
「ちょっと、お父さん!裏返しじゃない、みっともない!」
お前、分かってないな、これはリバーブルといって…
「何ワケ分かんないこと言ってんの!そんな格好で出掛けるつもりじゃないでしょうねっ」

「タクミもっ。気付いてんなら教えてあげなさいっ」
ペチりと頭を叩かれる。イテッ。教えたっつーの。止めなかっただけだ。

あー。平和だ。

8/22/2024, 1:25:38 PM