テリー

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鼻の先が冷たい。喉が渇いた。部屋はまだ薄暗く、シンと静寂に満ちている。
(トイレ行きたい)
そう思いながらも隆之介は、キンキンに冷え切った鼻先を毛布に埋めて縮こまった。
布団越しに小さな塊が足先に当たるのを感じる。
(ゆかりさん起きるかもだし)
徐々に強くなる尿意と、寒々しい気温へ募る億劫さ。瞼は未だに眠りへと誘ってくる。
意を決して外に出した片手でスマホを引っ掴み時刻を確認する。
—6:27……あと1時間寝れる。
パッと照らされて顰めた顔のまま、スマホをサイドボードに放る。
寒い。尿意を誤魔化す様にそう脳裏で呟き二度寝の態勢に入る。
「ミ……」
小さく聞こえた欠伸と共に、足元の塊が動く気配がする。
ごめん起こしたね、と声をかけるよりも先に、縁は隆之介の腹の上に歩みを進めた。
布団越しに感じるずっしりとした重み。彼女は布団の中が嫌いらしく、添い寝は布団の上に限られる。冬の風物詩だ。
嬉しい。嬉しいのだが、今の隆之介にとって腹の上は尿意を促進させるだけの忌々しい場所であった。
「…ゆっちゃん、お腹やめて…」
弱々しい提案も虚しく、彼女は丸まり眠りにつく。
トイレに行きたい。眠い。トイレ。
散々葛藤した末に隆之介は身体を起こし、布団から出る。ヒヤリとした空気が身体中を包み、足先がカチコチに凍りつくようだった。
無理矢理退かされた縁は「理解出来ない」と言わんばかりの視線を隆之介へと向けた。
トボトボとトイレへと向かい、やっと一息付く。
扉の外には縁が待っており、迷惑そうに「終わったか」とひと鳴きして踵を返した。
二人してベッドへと戻りようやく二度寝をする。先程同様、縁は隆之介の足元で落ち着いた様だ。
寒いのは嫌だ。けれどこれがあるから冬を嫌いにはなれない。
この時期にのみ起こるこの日常に、隆之介はヤキモキしながら再び眠りについた。

≪冬は一緒に≫

12/19/2024, 1:56:45 AM