紫陽花《しょか》

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 夕暮れが溶け込む空が映るスマホには、一件のLINEが来ていた。
『今日家に泊まらない?泊まるならウチの前に来てね!!』
 友達の彼女は今日、学校を休んだ。学校の校則に休憩時間もスマホを触るな、とは無いが、なんとなく私は学校にいる間は触らないようにしている。だから、昼休憩の際に来ていたこの一通に気付かなかった。
 いきなり泊まるかと問われても、私の母はそう言った遊びは許さない。何より、風邪で休んだというのにわざわざどうして呼ぶのか。
『絶対にお母さんが許してくれないから無理だよ。それより風なんでしょう?流石に風邪が私に移って治ったらいいね、なんて言うほど良い人じゃないよ?』
『えぇ、そんなぁ…じゃあ風邪は嘘って言ったら来てくれる?』
『ズル休みしてたの?って言って、行かない』
『ええ、そんなぁ〜…』
 そのままスマホの通知を切って帰路に着く。やっぱりもう秋とはいえ肌寒い。私はほんの少し背を丸めて家に向かった。

 家に母は居た。どうしてか、今日は私を出迎えてくれた。いつになく笑顔で、優しい声で。何故かそれを私は不気味に感じた。
 母は言う。私は救われたのよ、と。訳もわからず黙っていると、さらに母は上機嫌に言葉を紡ぐ。やっとあれがいってくれた、私は解放されたの、だから、だから、だから。
「貴方とも縁を切らせて頂戴?」
 それが物理的な意味を指すとは到底思うことは出来なかったが、母の手にある白光るそれが頭上に上がった時、私は死んだ。

ーなら、どうして私の隣に彼女が微笑みを浮かべて眠っているのが見えるのだろう。

【1件のLINE】
お題が更新されるごとに進む物語No.3

7/11/2023, 10:53:27 AM