袖を切る
切り落とした腕にまとった 袖はひかりを広げて
見失ったからだを探して 黄土色の川面をわたり
とこにいけば温もりにたどり着くのか
うかぶ木の葉の赤さと しずむハンカチは微熱の夜の
あなたの胸もとに覗いた とおい日の残照
蕗の筒を覗くように
すぼまった袖さきに目をあてると
温もりのかたまりだけが 色もなく
輪郭をにじませて
あなただったころの匂いだけが 明るんで
目の前をはらはらと
今年はじめてのぼたん雪のように
片袖の ひかり千切れて
あのとおい声のように この指をすり抜けてゆく
7/26/2025, 5:04:26 AM