「金木犀か…」
晴れといえば曇り、曇りといえば明るい、そんな中途半端な空の下。
先生は感心したように「金木犀」と呼んだ花に手を添える。
「綺麗だなぁ」
朱色で星形のそれは、薄暗く湿った土を華やかに彩っていた。
「私としては、花よりも…柿でもなっていてくれた方が嬉しいですけどね。」
それを聞くなり先生は、「風情のないやつめ」と口を尖らせた。
「懐かしい…」
私は、腰を屈めて金木犀を一つつまみ取った。下から上からと花弁を覗き込む。
「…やっぱり、柿でもなってくれた方が、嬉しかったのに。」
立ち上がり、夕焼けに浮かぶ己の影をきつく睨みつける。
乾いた土を、朱色の花弁が彩った。
「キンモクセイ」
11/4/2025, 3:48:36 PM