#色とりどり
3つ並んだホールを会場とするそこへ足を踏み入れると、薄暗がりの中にたくさんの人間がいた。
綺麗に編み込んだ髪にリボンを飾る子、誰かをイメージするような色でコーディネートした子、両手いっぱいにカバンをぶら下げて歩く子のそれには、同じ顔の少年の缶バッチで一面が埋めつくされている。
会場を占める大勢の女の子たち――彼女たちは、まるで戦いに行くかようだった。見た目はとても可愛く、たくさんの荷物を引き下げて歩く姿は凛々しく、彼女たちが「好き」を全面に出して堂々と立つ姿は、なによりも美しかった。
これから何が起こるのか、ソワソワとしながら、私も彼女たちに紛れて、じっとその時を待った。
BGMが止み、さらに大きな音響でイントロの曲が流れる。
暗転から、私たちが待ち望んでいた彼らがステージに現れた。
「きゃー!」
割れんばかりの黄色い歓声が、大きな箱に響く。
瞬間、私たちは手に持ったペンライトのスイッチを押す。
多色が輝く色とりどりの光の海が、きっと彼らの目に映っているのだろう。
その中で私は懸命に腕を振る。
私はその一部。それでもいい。
「応援してくれて、ありがとう!」
彼らが光輝く力になるなら、私はいつまでだって振りつづける。
小さなエールを私から、彼らへ。
1/8/2024, 2:15:40 PM