無音

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【129,お題:夢と現実】

深い泥沼の底から、ゆっくりと浮上していくような目覚めだった

重たいヘドロを引き摺って、夢の余韻を残しながら上体を起こした
内側から鈍器で殴られているような、鈍い痛みに顔をしかめて額を押さえる

嫌な夢を見た

どこか抽象的で、なんとも形容しがたい
あえて表現するなら、酷い風邪を引いた時に見る悪夢のようなそんな夢

床も壁も上も下も分からない空間に何時間も閉じ込められ、自身が徐々に狂っていくのが漠然と理解できる
狂気の金切り声を上げながら、耐え難い憎悪恐怖と負の感情が津波のように押し寄せた

視界は歪み、周りの風景は目まぐるしく変化し、一時たりともやむことの無い嵐
眼球を抉る針のような蛍光色の黄色、腐乱死体から滲み出るようなおどろおどろしい体液の生臭い紅

最悪の目覚めに吐き気がする
しかも夢から覚めたとて、そこは先程までの夢と大差ない程の悪夢のような現実

夢も現実も、そう違わないじゃないか

嫌な夢、嫌な現実、嫌な夢、ずっとこのサイクルの繰り返し、一度だって安心して眠れた日はない
もう身体が覚えているのだ、普通の人間が食って寝て起きるよう、当たり前の日常に習慣化されている

喉のすぐそこまで込み上げた物を、無理やり飲み込んで
おぼつかない足で危なっかしく歩きながら、幼児の落書きのようにグチャグチャに歪んだ視界で前を見据える

これがもし夢であったなら、目覚めた時、少しは良かったと思えるだろうか

そんなことを思っても結局これが現実なのか

また今日も1日が始まる

12/4/2023, 11:30:13 AM