StRat

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「この箱の中には、たくさんの人を殺す呪いが詰まっている。」
 道端で倒れているお婆さんに、水の入ったペットボトルを差し出した日。御礼にこの箱を貰った。
なんでも、このボロボロの箱の中には無差別に大勢の人を死に至らしめる呪いが詰まっているとの事で。お婆さんは、憂さ晴らしをしたい際にこの箱を開けるといいと言いながら、私に譲ってくれたのだ。
 別に、私はオカルト的なものをあまり信じていないし、もう幽霊等に本気で怯えるような年齢でもない。
 けれど、人は開けるなと言われた扉を開けたくなったり、芸人に押すなと言われたら熱湯に突き落としたくなったりしてしまうものだろう。例に漏れず、私もこの箱の中身が気になって仕方がなかった。
 一応、数日は我慢して置いたものの、好奇心は簡単には抑えきれず、我慢できなくなった私は……その箱の蓋を開け、中身を見てしまった。

「昨夜、〇〇市内で大規模な火災発生。36人が死亡。」
 変わらない朝、私はいつも通り朝ごはんを食べながら、いつも通りぼんやりとテレビのニュースを眺める。……テレビは、火災の話で持ち切りだった。
 もしかしたら、と私は箱を開けたことを思い出す。あの箱を開けたせいで、呪いを世に放ってしまったのではないか、と頭の中で考えてみる。
 けれど……ニュースの世界はいつでも人が亡くなっている。何もしていなかったとしても、事故や事件、戦争等で、沢山の人が死んでいる。
だからきっと、あの箱を開けたせいではないと、私は私に言い聞かせた。だって、空の箱で人が殺せるわけないもの。
 そんなことを考えていれば、もう家を出る時間が迫ってきていて。私は焦りながらパンを頬張り、急ぎながら家を出る準備をし、外へと駆け出した。

 家の中には物憂げな感情と、空っぽになった箱を置いていき、私はいつも通りの日常へと溶け込んでいく。


(お題 物憂げな空)

2/25/2026, 12:08:22 PM