【あなたに届けたい】
あぁ、急がなくては。
家路を辿るその時間がもどかしい。
焦りに灼け付く喉の奥が、乾いて仕方がない。
「待ってて!美味しく料理するからね!」
車のハンドルを強く握り締めて、アクセルを踏んだ。
『いやぁ、今年は凄くてなぁ。思わぬ量だったんで、良かったら食べてくれ。』
と厚手のビニル袋いっぱいに、野菜を渡してくれた職場の先輩を思い出す。
家で待ってるあなたに、美味しいものを食べてもらいたくて、何が作れそうか考える。
「あ!何が良いかな…。相談しよ。」
ハンズフリーの通話を起動させて、今日の貰い物を報告する。
「かっちゃん、今日ね。お野菜いっぱい貰ったんだ。何食べたいかな?」
煮物、お浸し、卵焼き、鍋、うどん、そば、ラーメン、味噌汁。それから、それから…。
キッシュ、ソテー、グラタン、シチュー、パスタ、サラダ、スープもいいなぁ。ホイル焼きも捨て難い…。
―――今夜は、何を作ろう。
翌日、鍋いっぱいに作った具沢山スープを先輩にはお裾分けした。
1/30/2024, 11:28:25 AM