突然の君の訪問。
「びっ、くりしたぁー」
家に帰れば、誰もいないはずのリビングに我が物顔でくつろいでいるそいつがいた。
「おかえり」
「ただいま。いや、ここ私の家なんだけど」
「知ってる。合鍵使った」
ぷらーん、と鍵を揺らしながら言うそいつに、手を伸ばして鍵を奪い返そうとすれば、すっ、と体を引かれる。
「返せや」
「いやだ」
「何しに来たの」
「……フラれた」
「また?」
「また」
傷ついているのか、いないのか、よくわからないテンションで、少しだけ困ってしまう。
「本当に長続きしないね」
「はぁー、向いてないのかな、恋愛」
「そんなこと、……ないとは言えないけどさ」
「言ってよ、そこは。嘘でもいいから慰めてよ」
「やだよ、情が移るじゃん」
「情、ねぇ……。まだ私のこと、好き?」
「……好きじゃないよ」
この関係すらも崩したくないと思う私の臆病さに気づいた彼女は少しだけ呆れたように、それでいて気の毒そうに笑った。
8/28/2023, 1:34:47 PM