題 願い事
ねえ、今日は七夕だよ
そう言って振り返る私に、彼は微笑む。
「そうだね、願い事は決めた?」
私はそう言われて手を彼氏に突き出す。
「えー、決められないなぁ、まずお菓子を沢山食べられますように、頭が良くなりますように、テーマパークにタカシと行けますように、それからそれから⋯」
「ストーップ」
私がまだ列挙しようとすると、タカシに制止される。
「え?何?」
「何って、ちょっと待って、今の、お菓子なら買ってあげるし、頭良くなるのは、一緒に勉強しよう。テーマパークなら、チケット買っとくよ、今度行こう」
「ええ、全部お願いする意味ないよー」
私は優しく微笑むタカシの胸に飛び込む。
「じゃあ、じゃあね⋯」
「うん、何?」
優しく頭上から降ってくる声になんだか気持ちがふわふわする。
「じゃあ、ずっとそばにいてくれますように」
これなら?という気持ちでタカシを見上げる。
「願うまでもないよ」
タカシが私のおでこに軽くキスをする。
「じゃあ、私の願いは全部タカシに叶えられちゃうんだねっ、なら、タカシの願い事は?」
「もう叶ってるけど?」
タカシは私を優しく微笑んで見下ろした。
「君という人が僕と一緒にいてくれますようにって」
タカシの優しさ溢れる視線にどうしていいか分からなくなってしまう。
私の困惑顔に、タカシの笑みはより優しくなる。
ああ、こんなに大好きな人といる時間は幸せだ。
どうか、空の彦星様と織姫様も1分でも長く一緒に過ごせますように。
私は空を見上げてそう願わずにいられなかった。
7/7/2025, 10:19:24 AM