作家志望の高校生

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幼少期からずっと、何か動物を飼ってみたかった。
ただ、幼い頃はまだ単純で、頭だって悪かった。
けれど、大きくなるにつれて、長袖じゃなくたって魚は人を噛んだりしないと学んだ。
そこらの海にペンギンはいないと知った。
小さい頃は大人になれば勝手に機危機が全部なくなるのかと思っていたが、そうではない。
大人になるにつれ皆現実を知っていって、僕のように、魚と話せたり、魔法が使えたりするような幻想の世界は誰も見えなくなってしまう。
僕一人だけが、あの幼い日の絵本の中に取り残されていた。
今だって、海に行けば色とりどりの小魚と珊瑚に迎えられ、悠々と泳ぐウミガメの背に乗って、クジラの背中で昼寝ができると思っている。
でも、そのどれもがどこかハリボテじみていて、結局僕も周りの大人達と一緒なんだと、幻想を信じられない、俗世界に染まった人間なのだと分からされた。
いつかはふわふわとしたおとぎ話の世界を現実に描いた僕の心は、もう形骸化した夢の世界の破片を必死に掻き集めて繋ぎ止めているに過ぎない。
もう僕は、喋る魚なんていない、帰ったって誰もいないことをとっくに知っている。
職場を出て、家に向かった。
雑多な家具と捨てられないゴミに囲まれた、狭く古いワンルーム。
ぱちりと瞬きをして、僕は現実から逃げ出した。
ボロボロになった幼児の心を呼び覚ませば、この部屋はたちまち宝の山に変わる。
捨てられないお菓子のパッケージは、キラキラ光を反射するホログラム担当。
配置を決めきれなくてぐちゃぐちゃの家具は、家の中を楽しい迷路に変えている。
こんな部屋では、動物を飼うなんて夢のまた夢だ。
けれど、ふわふわとして夢の中の僕は、この部屋を幻想的な色をした子犬や子猫の駆ける幻影を確かに眺めていた。

テーマ:夢見る心

4/17/2026, 9:22:55 AM