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 彼が物を運んで手伝おうと思っていたら、バランスが悪く落ちてしまった。拾うのを手伝いに行くと彼が慌てだす。蓋が開いてバラバラと散らばった紙はどれも覚えがあるもの。私が今まで送っていた
「手紙…?」
「うん、君からもらった手紙」
 私の手紙が大切に保管されていると分かって、しかも綺麗な箱にしまってあるだなんて嬉しい。集め束ねていると手紙以外にも写真なんかも混ざっている。咄嗟に隠されたけど、しっかり見てしまった。私が写ってた写真。

「ねぇ、今の…」
「な、何のことかな?」
「見ちゃったんだけど、写真」
「あ、ははは…」
 乾いた笑い声と恥ずかしそうに頬を掻いて観念したのかズラリと差し出された。全て私の写真で、寝ている時や街を歩いている時の。これは…

「と、盗撮…?」
「ごめん、許可なく撮ったことは謝るよ。ただ、仕事で会えない時は寂しくて…、君の写真を見ないと安心出来ないんだ。…『バカみたい』だろ?」
「別にそこまで思わないけど」 
 悪いことがばれた子どもみたいにしゅんとした彼を可愛い、と思っている。まぁ、疑問が残るけど。

「ここに写真があるってことは…、これは予備で、本命があるの?」
「…」
 明後日を向いてしまった彼に確信を得てしまう。"まだ持ってる"
「俺を好きなだけ撮っていいから見逃して…」
 目には目を歯には歯を。写真には写真を。
 本命の写真が気になってしまったけどあまり彼を苛めてしまうのも可哀想。
 写真機を手に、しゅんとする彼へ向けてシャッターを切った。

3/22/2023, 11:29:10 PM