紅月 琥珀

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 ある日の放課後。友人達とカラオケで盛り上がっている時だった。
 ピコンと通知が届く音が鳴り、皆一斉にスマホの通知を確認する。
 その中の一人が自身の通知であると明かし、その相手がこの場にいる全員共通の友人であるとも伝えられた。
『今、どこにいるの? だって』
 そう私達に言ったが、伝えた本人は酷く動揺している。
 それもそのはず。先程LINEを送ってきた友人は、放課後カラオケに行くからと誘ったが、用事があると断っていたからだ。
 その為、何故そんな事を聞いてるのか分からないといった表情をしている。
 それは、他の人達も同じではあるが⋯⋯私だけは違った。
『莉乃、私が変わりにLINE返信するのって大丈夫? ちょっと気になる事があるから確認したいんだけど良い?』
 そう言うとふたつ返事でスマホを貸してくれた。
 そのまま私は彼女とやり取りし始める。

 用事あるって言ってたけど終わったの?

 終わった。今どこ?

 駅前のカラオケ居るよ。

 どこの?

 いつものカラオケだよ。分かるでしょ?

 わかんない、今どこ?

 来るならいつものカラオケね。着いたら言って。

 今どこ? わかんない、今どこ?

 今どこ?どこ?どこ?

 どこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこどこ

 今どこだって言ってんだよ言えよ言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え

 ヨミ駅前商店街の№℉℃√⁉ってカラオケ店だよ。

 今イくね

 それだけ返すとメッセージが止んだ。
 私は不安そうな皆に怪異であった事を伝えて、とりあえず私のスマホから本物の彼女のアカウントにLINEを送り、一連の事を説明して今何をしているのか尋ねた。
『いま親戚の法事に参加してるから、今日はカラオケとか無理だよ。そいつ何がしたかったんだろうね』っと返って来る。
 とりあえず、全く違う場所。しかもこの世にはない場所を指定したので何とかなるとは思うが⋯⋯一応おばあちゃんに連絡して事情を説明。
 すると、おばあちゃんは大笑いして良くやったと褒めてくれた。
『いい判断だよ、そいつは自分の居場所教えると来ちゃってね。寂しいからって気に入った子を一緒に連れて行くやつだ。しかし、案内したのがヨミとはね。恐れ入ったよ。』
 何通かはメッセージが届くかもしれないが、それ以上は何も出来ないだろうと楽しげに言っている。
 私はその事を友人たちに言うと、ようやく安堵の表情を浮かべてホッと一息ついていた。
 まぁ、おばあちゃんが言うなら間違いないだろうと私も一息つく。

 そうしておばあちゃんの言う通り2・3通恨み節が炸裂したLINEが送られてきたが、その後は何も起こることはなく⋯⋯カラオケを目一杯楽しんでから皆と別れて帰宅する。
 家に帰るとおばあちゃんは私の頭を撫でながら、最近良くやってるねぇ。
 流石私の孫だよって褒められて少し満更でもないかなって思ってしまった。


3/19/2025, 2:24:27 PM