のねむ

Open App

スマホの光に寄ってきた小さな、小さな虫を、ゴミだと思って無意識に指で押し潰してスライドした後に、虫だったと知るあの瞬間、ああ人間ってなんて気持ち悪いんだろう、と思った。

それは、罪悪感からでもあったし、潰した虫の嫌悪感もあったし、その二つの感情を殺した側が持ってしまう人間の機能に対してでもあった。


無意識の殺しを、あとから知った時。それは自分の中で意識した殺しになってしまう、と気付いたのは何時だっただろうか。
この光に寄ってきた哀れな虫も、きっと、一生懸命に生きてた筈だ。眩しいくらい、クラクラする光に近寄って、それから抗えもしないような大きな脅威に襲われた時、この虫はなんと思っただろうか。
騙された、罠だった、だなんて思わないで欲しい。

あぁ、ほら、またこんな小さな虫にも言い訳をしてしまう。
きっと私は気持ち悪い。


ゲームセンターで、他のぬいぐるみよりも少し顔や形が不格好なものを獲得した人の「この子不細工だから、あの子の方が良かった」っていう言葉を聞いた時、あぁ。人間は恐ろしい生き物だ、と思った。

相手が感情を表に出せる生き物ならば、こんな言葉は言わないだろうに、それが喋りもしない動きもしないぬいぐるみになったら、容赦なく言葉の槍で突き刺していく。
本当に、このぬいぐるみ達には心がないんだろうか。昔の日本では、道端の石にも神様が宿っている、と考えたそうだ。
ならば、心はなくともそれに準ずる何かは宿っているんじゃないだろうか。
ぬいぐるみの目に縫われた黒い黒いボタンと目が合った気がした。その黒が、どこか悲しそうだったから、心の底で「どうか。君が幸せになれますように」と呟いた。


私も結構、全てを見下しているのかも知れない。


人間は、大変身勝手な生き物だ。
この地球の頂点は私達だ、と言うように無様に威張っている。
全ての悪魔はここにいるとは、よく言ったものだ。全くもってその通りなのだから!

それに因果応報、この言葉があるように、沢山の命を奪った人間はいつか同じ目に合う日が来るのだろう。
私はそれを受け入れたい。


この世に人間と同じように生まれ、無意識に殺しの対象にされ虐げられた生き物たち。

その存在を私は、1000年先も、忘れないと誓おう。
この地獄の中で。









───────
命は平等、の中に人間や愛玩動物以外の存在は含まれて居ないんでしょうね。
虫一匹でも殺せば、地獄行きだと教わりました。私は、きっと地獄に行くでしょう。もし、天から蜘蛛の糸が見えたとしてもそれを掴みはしない。


小さな虫程度、と思っている時点で、私たちは命は平等だなんて思っていないんだろうなと思います。
人のその地位によって、お金によって、何かによってやはり変わるんです。
私の命はきっと軽い。それは、小さな虫を自分で潰した時からずっと。

2/3/2024, 5:01:20 PM