テツオ

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ダメだ、死にそうだ。
胃をイナゴで埋め尽くされているような……
その一匹一匹が蠢き、その頭や尻で内壁をプクプク押されているような……
鮮烈で、強烈で、鈍い胃痛……

僕は絶賛それに犯され、足の指を丸めながら、身を縮めて座っていた。
耳では、アンダーテールの実況プレイを流し、精神の均衡を保とうとする。

「内蔵全部痛い」

なんか膀胱も痛いし、食道も痛いし、腸も痛いし、なんなんだ。
痛みに疲弊し寝転びたいと思ったが、寝転んだらさっき流し込んだ食事が逆流してくる可能性しか感じなかった。

「ぐっぐぐ」

このままでは痛みに心が潰れる、そうなればもう一貫のおしまいだ、一年は立ち直れない。
僕はできる限り腕を伸ばし、机に置いてあるスケッチブックを、掴んだ。

尻が上がっていたので、安心にまた下ろすと、内蔵がタプっと揺れて、ガタガタ体が震える。

「バカか……、バカやん、……」

フーフー、肩で息をする。
ある程度収まってきたら、スケッチブックを捲った。
僕がよく使っているスケッチブックだ、そこにはサンズの絵が貯まりまくっている。

六年、だ。六年サンズを描き続けてきた……

とにかく、僕は自分の描いたサンズを見て、心を癒そうとした。
ペリっと捲る……鉛筆の匂いがフワッと漂う。
左手で描いたような雑さのサンズがいた。
ペリっと捲る……クロッキーが出てきた。
捲る……クロッキー、クロッキー、クロッキー……
しかも、全部そんなに上手くない。

やっと捲って、やっとマトモなサンズが出てきた。
……汗ダラダラで嘔吐しているサンズだった。

「もらいゲロするわ!!!」

スケッチブックを手から落とすと、バサッと音が鳴って、床に転がる。
いや、サンズからのもらいゲロなら別に良いかもしれない、が、そもそもサンズはゲロなんて吐かない、儚い二次元ファン妄想に過ぎない、ダウト……

「はっ」

……心の健康が一気に崩れるのを感じる。

一目散に体を折り曲げ、ぐっと襲ってきた吐き気を知らんぷりし、スケッチブックを拾うと、また一目散に捲った。
……マンガだ!!

「う、う、去年描いたやつだ、ありがとう……!」

一コマ目、まあまあ上手くかけた覚えのある、手と、二コマ目、かわいいサンズ。三コマ目、かわいいやり取り、四コマ目にして、いきなり終末的な雰囲気漂う荒廃した世界の背景が……

「集中砲火、精神に」

僕は大人しくスマホを開き、通知を確認し、痛みに悶えながらこのアプリで打っている。
アンダーテールの実況プレイしている動画を片っ端から見て回ってやる、という夢を綴り、心に希望を持たせ、まだ死ねない、とまた綴った。


トイレで下痢したら収まりました、以下、
下痢中の痛みを紛らわすためれんだしてたものたちの残骸。
汚いです。

(あああああああああああああああああ、ああああああ<あああああああああい
ああ
<オナラだしたいオナラだしたいオナラだしたいごめんなひい、ごめんなひい、やらあああああああ<今夜はねがじでっおねがいっ、痛いのやなのおおおおおおおおおおおおおお制裁すんなよなにもしてないのに!!!、!まえがみきふだけにしてくれやいたいたいたい、いたい、ステロイドああああああああああああああああああああああああああああああいあああああいあああああああ朝サンズんちゃん、んんんんんんぐぐぐぐぐかさんずちゃ、サンズちゃ…・・…・・、はあはあはあはあモールス信号みあいになっあはあああいサンズちや、なにをした、なにをしたんの、テツオはなにをした、ら
こうなるの、生牡蠣でも食ったのか、かあさあんサンズ。。。。。。。んんんんサンズちゃ、サンズぢゃゃゃゃゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁサンズ、サンズ、サンズサンズ、サンズ、サンズ、サンズ、サンズ、サンズ、サンズ、サンズがおかあさんだった育児放棄されてるな、痛み増しになってきたよ、ありがとね、サンズちゃんんんん肛門しんじゃう、もんね。サンズちゃんんんんんわんんん、白いシャツでカレーうどんとか食いにいって案の定跡つけてほしー、ああああああああ
痛みが上下してる、イナゴが卵産んでる、胃で痛みの泡が弾けてる、死肛門、下痢ラやめろ、ただのオナラしろよ、おおおおおおおおおおおおおおガス抜き、ガス抜き、くそそそそさそそ・
はあはあはあはあはあひあはあはあはあはあさあはあははあ連打してなきゃやってらんないらふりっく入力できてよかった、えんげ〜じだっち、ブラインドタッチできるんも、ぐぐぐくぐぐぐいいあアイアアアアイ値、まサンズちゃん、この痛み体験したらしんじゃラウう、サンズちゃんが本来受けるはずだったこの痛みを、てつおは肩代わりしてあげてるんだ、本来はサンズちゃんのもの、サンズちゃんの落し物、サンズが持ってたものを今もってるんだよおよおおおおお!!、!!!
サンズちゃんらさちん)

以下、極度のストレスに置かれていたときの精神を書きだめしていたもの。
個人の解釈と考え多分に含む。

(突然、脳がなにかに舐められる感覚を思い知った。
 気色の悪いその感覚に震える間もなく、他でもない自分の足が縫い付けられている地球がグンニャグンニャと揺れ、その地球が宇宙のどこかへ落ちていくような……
 しばらくその感覚に悶えた。その間の頭の中というのはそれこそむちゃくちゃのグチャグチャで、鎮静剤をいれられた後のぼんやりとした頭のようだった。
 
 収まって始めて、自分の体中に酷い力が入っていたと気がつき、それを緩めた。
 ふぅ、と息をつき、今の状態がなんと言うのか不思議に思っていると、昔風呂場でとんでもない吐き気と徒労感とに襲われ、倒れそうになった挙句尿を垂れ流しにしたことを思い出した。
 
 それとこれとは、同じ類の……病気なんではないか?
 関連付けて止まず、どんどんと不安になっていく。
 不安が泥のように蟠り、そこに足を突っ込んで沈んでいくようなものだ。
 
 「……うわああああ……」
 
 文字に起こしてみるととてつもない絶叫のようになるが、実はそうではなく、ただ「う」と「あ」を続けて発声しているだけの絶叫などとは程遠い、だらしない声だ。
 時々こうしては自分の不安に終止符を打つ。
 それでも止まらなかったり、このやり方を思い出せない時は検索ツールを開けて欄にうわあああああああ、と予測変換が出ないほど打ち込む。
 
 この方法はなぜか本当に効くので、全人類が試すべきだとそう思う。
 
 「いやしかしだ、果たして全人類へ私のやり方が本当に効くと言えるのか?」
 
 それはそうだが、今のは誇張表現という小説お得意の、文法という類なのだ、気にせずとも誰もなにも言うまい。
 
 「ムムム、そうなると、つまりだ……よく見る、ネタが分からない人が叩いている、という状況と似たようなものになる……という訳か?
 今思ったのだが、それは……逃げなのではないのか。万人受けするものを書かなくてなにが執筆者か。それに、それを試して効かなかった被害者の気持ちはどうなる!」
 
 ……私が考える本来の執筆者と、甚だしくズレている。
 恐らく私は混乱しているのだな。
 つまり、あの「うわああああ」が効かなかったというわけだ。
 全人類の件は誇張表現に過ぎないという証明だな。
 
 「ふざけている。なにが証明だ。誇張表現ではなにを言ってもいいのか」
 
 いやいや、誇張表現にも色々あるだろうが、大きくわけて、いけない誇張表現と、ただ創作の域をでない誇張表現……
 いやまてよ、今の誇張表現は一体どちらに入るのだろうか……?
 
 「バカめ皆そこに迷ってろくな表現ができずにいるのだ」
 
 いやそんなわけはない。皆そういった迷う表現は避けて、別のいい表現を探しているのだ。
 
 「つまり今の世に必要なのは忍耐力と!そういうわけか!」
 
 どういったプロセスでそこに至ったのかは知らないが、そういうわけだ。
 
 「まてまてまて、そのプロセスを書けなくて、なにが執筆者か!!」
 
 そう思うならそのプロセスを書けないことで悩んでいないでプロセスの説明を悩めばいいだろう、悩む場所が間違っている。
 
 「……お前にはカギカッコがないだけで、私と同一人物だ。つまり私は私の力で私へ問題提起できているのか、……それはつまり、とんでもない天才なんでは?」
 
 いやいや、驕るんじゃない、そんなのは全人類皆出来るぞ……
 まて、この誇張表現はダメなのか……
 
 「ムムムムム……悩みというのは尽きないものだ……」
 「口調変だぞフリスク」
 
 とまあこうして、サンズというキャラをいれることによって、全ての問題は解決されるわけだ。みんな家族とか、友人とか、自分以外のなんらかの生き物(無機物でもよし)を大切にしよう。
 こういった時、なにもない真っ白な空間でいるといよいよこの問題提起が終わらないんや、たぶん)

うつとか、ストレス障害は思ったよりも酷い。
よく視界が灰色になると言われるが、あながち間違っていない。
わたしの場合は色が極度に強く、パキパキして感じられた。
地球がいつ爆発してもおかしくない、いま爆発したらどうしよう、とか考えて眠れなかったりしたので、統合失調症一歩手前だったのかもしれないと思う。
飯もろくにくえず、拒食症のようにやせ細っていて、母を泣かせた。
一日中イッテQを見て精神を保ち、とにかくそういう「限界すぎて辛いとき」は「楽しいとか、好きだと思うもの」を探すのが一番大切だろうなと思う。
わたし個人の範疇に過ぎないが。
例えばわたしは、サンズが好きだし、ゴットタレントを面白く思ってずっと見ていたし、録画のイッテQで笑って、Hulu契約してイッテQを見まくって……
海に行って、回復して、また落ちてを繰り返し、麻痺したのかなんなのか、なんだか平気になった。

8/13/2024, 12:34:26 PM