NoName

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 何度書いてもダメ出しされた。同じ字を100回、200回書いた。それでも先生はOKをくれない。心が折れた。筆を折って投げつけようかと思った。
 700回を過ぎ、怒りと疲れが頂点に達した時、今まで入り続けていた肩の力がふっと抜けた。
 その一瞬に書いた字は、今までとはは明らかに違った。流れるように、自然と手が動いた。
 書き終わったところを見ていた先生がつぶやいた
「うん、それだ。それでいい。それがいい。すばらしい」
 この一瞬があるからやめられない。
 だから、明日も明後日も書き続ける。

4/5/2024, 1:34:18 AM