太陽の光を浴びて、
ようやく見えるくらいの明かりを纏う月が、
気持ち悪くて仕方が無かった。
暗闇に爛爛と煌めく塵の中に、ひとつ、
ポツンと浮かぶ月は無機的で、宛ら死体のようだ。
能く視える程に、
その光は死化粧に思えてしまう。
ある夏の晩、
極大の流星群が見えるという事で、
私は宙を見上げた。
そこには普段と何ら変わらぬ月があった。
その時、何年と生きて、
どういうわけか、初めて月が奇麗だと思った。
無理に言葉を当て嵌めたなら、
忽ち損なわれそうな、喩えようのない美しさだろう。
噫、私がこれまでずっと抱いていた嫌悪感は、
今日の為にあったのか。
7/12/2024, 7:37:46 PM