七色に光る大岩。大きな山の中腹に、その大岩は鎮座している。マグ一行は、その大岩の前に居た。深い森の中、大岩があるこの一帯だけ、少し平らな広場のようになっている。
カシャッ……カシャッ……
マグがシャッターを切る音が、森に響いている。
「本当に、この岩なのか?」
「地図に寄ると、この岩だな。」
「本当に?光って無いのに?」
魔法使いマグの使い魔であるオキナインコのコンペキは、今日はマグの肩では無く、マグの相棒の狼獣人、ラッタの肩に乗っている。マグの撮影の邪魔になってはいけないから、仕方なくだ。
「それにしても、お前は相変わらず獣臭いな。」
「……木の枝にでも留まってればいいのに。」
コンペキは、背の高い森の木を見上げる。一番下の枝でも、はるか上だ。それに上空には、コンペキよりも大きな鳥が鳴きながら飛んでいる。
「馬鹿言うな。お前は、この一行の用心棒だぞ!俺の事も守るのが当然だろう!」
その時、背後でガサガサッと音がして、ラッタがコンペキのくちばしを掴み、振り返った。
「静かにしろ。何か来るかもしれない。」
「……。」
コンペキを掴んだのとは逆の手で、ラッタは棍棒を握りしめる。ガササッと、草むらから出てきたのは野ウサギだった。ラッタとコンペキは肩の力を抜く。その時だった。風がサァァァっと山頂から吹いてくる。ラッタとコンペキが、風の吹いてきた方を見ると、視線の先で大岩が光っていた。
「「!!」」
深い森の中で、七色に光る大岩。その光景に、二人は揃って息を飲んだ。きらきらと光り輝いている大岩の前から、写真を撮り続けていたマグが、二人の元へと戻ってくる。
「日の光が入ってくれて、助かったよ。」
マグは、森の上を見上げる。曇っていた空に、晴れ間が広がっていた。
「綺麗だな。」
「ああ。」
コンペキとラッタは、ジッと大岩に見入っている。きらきら光っている、その光が、二人の目の中で光っている。マグはカメラを構え、二人の顔をファインダーに収めると、シャッターを切った。すぐ隣で聞こえた、その音に、コンペキとラッタは我に返る。
「綺麗だな。」
「そうだね。日の光が当たると普通に見える岩が光るんだ。ただ、岩を割って作った石は光らないそうなんだ。ここに来ないと、あの光は見られない。」
「へぇ。立派なもんだ。」
目の前の大岩は、徐々にまた光を失い、ただの大きな岩に戻る。二人と一匹が空を見上げると、また薄雲が空を覆っていた。
「さぁ、帰ろうか。日が暮れると危ないからね。」
「ああ。」
コンペキがマグの肩に収まり、マグ一行は、山を下る。マグは、またひとつ素敵な景色を写真に収めた事、その景色を大事な者たちと見られた事を、心から喜んでいる。
3/27/2025, 4:58:25 AM