二次創作 文豪ストレイドッグス
『織田作がジイドと戦うことを止めたい夢主』
「織田作!! 待って!」
雨の中、私は織田作を追いかけていた。
子供たちが乗った車が爆発するところを見た。唖然とする私に聞こえてきたのは、織田作の絶叫だけだった。魂からの叫び、それを聞いた時何となく私は悟ってしまった。ああ、この人はもう戻ってこない、と。
ミミックの本拠地の前、そこでやっと私は織田作の腕を掴んだ。
「織田作、お願い。1人で行かないで」
「𓏸𓏸。俺は、ジイドと戦わなければならない」
織田作はこっちを見てはくれなかった。ずっと、自分がこれから使うことになる拳銃を見ていた。
今、この人の心の中に私はいない。いるのは、子供たちとジイドだけだ。
それが悲しくて、涙が零れる。
「織田作……。私を見てよ……」
ポツリ、私がそう呟くと織田作はハッとして私の顔を見た。
「𓏸𓏸……。お前、泣いているのか?」
「誰のせいだと思ってんの……」
とめどなく零れる涙を織田作はどうしたらいいのか分からないという顔で見つめていた。
「俺は……子供たちを守れなかった」
「それは私も一緒。織田作だけの責任じゃない」
「𓏸𓏸がいれば、太宰も大丈夫だろう」
「……馬鹿。太宰だって……私だって大丈夫じゃない」
そういうと、織田作は驚いた顔をした。
「𓏸𓏸は強いと思ってたんだが……」
「……好きな人が死んで大丈夫な人がいるわけないでしょ」
我ながら卑怯だとは思った。死にに行く前にこんなこと言われたら迷惑だろう。私だって、このまま想いを告げずにいたかった。彼を困らせたくなかった。だけど、溢れる想いを止める術を私は知らない。
「織田作、私、織田作が好きだよ。ずっと、ずっと好き」
「……」
「お願い、織田作……っ」
涙が止まらない。一度吐露した気持ちを止めることは私にはできなかった。
「……𓏸𓏸。すまない」
その一言で、私の心は完全に砕けた。分かっていた事だった。けれど、実際に言われると堪える物があった。
「っ……。ほんと馬鹿……」
「𓏸𓏸」
彼は名前を呼んでそっと私の目に溜まった涙を拭う。
「𓏸𓏸、泣かないでくれ。俺には、どうすることもできないんだ」
そう言って最期に彼は一言「ありがとう」とだけ言って、中に入っていった。
「太宰……。私はあの時、どうすれば織田作を止められたと思う?」
Lupinで私はウイスキーを片手に太宰に問う。
「何をしても、彼を止めることは出来なかったと思うよ」
太宰は、砂色のコートを靡かせながら席を立ち
「ああいう運命だったんだ」
と言い残し、静かに店を出て行った。
「……。マスター、太宰にツケておいて」
しばらくして、私はそう言って店を出た。外にはもう太宰の姿は無い。
「……帰るか。中也の体術特訓に付き合う約束してるんだった」
私は目の端に少しだけ溜まった生暖かい水を拭い、夜の闇に消えていく。
お題:泣かないで
2023 11 30
11/30/2023, 11:37:35 AM