あにの川流れ

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 ハイウェイを照らす照明灯のオレンジ色が、ぼくたちの上に被ったり離れたりをくり返す。排気ガスは空気を真っ白に濁して。
 カーステレオからは雪に警戒するよう注意がかかる。
 途切れずに、ぽん、ぽん、ぽん、ときみと会話を続けてゆく。ふと見れば、合流レーンからすごい勢いで加速してくる車を見つけた。
 眉に薄くシワをつくって深呼吸するきみに、

 「ねえ、合流してくるあの車、ぼくたちの前に来るつもりだよ。無茶な運転するねぇ」
 「ん、本当。車線変えましょうか」

 ちら、とぼく(の向こうの車)を見たきみ。ウィンカーがカチカチ。重力が傾いて。
 きみのすてきな横顔。少しだけくちびるが引いてあるのを見つけた。きみってば少しイライラしてる。

 「…アメ、あーんってしてあげよっか」
 「いえ、結構です」
 「んふ、ごめんね。はい、お手々だして」

 ころん、とアメ玉を落とす。きみが好きなりんごフレーバー。カラコロと転がす音がしている。

 「あのね、今年の抱負をどうぞ」
 「えっ、唐突ですね」
 「気分変えるのも大事だよね。せっかく大きな神社行ってきたから、神さまに聞いてもらったことぼくにも聞かせてほしいなぁ。決意表明だよ」
 「あなたに?」
 「ぼくに」
 「……そう、ですね、……平凡ですよ? 健康を心がけて平和に努めます、と」
 「いつも気をつけてること、続けるの大事だよね。案外大変だし」
 「ええ。だから聞いてもらったんです。あなたはどうなんですか? もちろん、聞かせてくれますよね?」
 「んふ、いいよ」

 大事なお守りとお神札が入った紙袋がかさり。

 「あのね、きみの癖を六つみつけること」
 「わたくしの癖?」
 「うん。なんでもいいの。嫌だ、って思ってるときの否定は早口で「いえ」って言うとか。眠くなると気持ちが良くなくなってきて、鼻で何度も深呼吸するとか、助詞がなくなるとか」
 「…………よく見てらっしゃる」
 「手の甲で口許を隠す、もそう。案外一年で見つかるの。きみのことをもっと知ろう、っていうぼくの意気込み」
 「なるほど。……ですが、なぜ、六つなのですか?」
 「五つだと簡単そう。六つってなると難しく思えるでしょ?」
 「……それだけですか?」
 「あのね、それだけ」

 (こんどこそ)ぼくを、ちらちら。
 口を緩めながら短な息を吐いた。それから、くしゃ、ってきみのお顔が笑うの。相変わらず下手くそな笑顔。これも照れ隠しの一種だから下手くそ。

 「おかしな人」
 「隠してもいいからね。ぼく、みつけるの得意!」
 「ふふ、今年は抱負を達成できますかねぇ」
 「いいよ、ちゃんと達成するからね」

 くすくすと笑うきみ。
 ……あ、いたずらっぽいときは、歯を見せて笑うんだ。んふ、まずは新年ひとつめ。
 きっとぼくの勝ちだからね。



#今年の抱負



1/3/2023, 1:01:52 AM