夜になるといかにもな雰囲気が出て、前を通るだけでゾッとさせる、年季の入った教会が俺の町にはある。日曜になると神父さまのありがたくそして眠気を誘うお説教がこだました。
そしてこのボロい教会が、俺の住む町で唯一自慢できそうなものだった。もっと正確に言うと、教会の中に飾ってある絵がどうにも貴重らしい。昔有名だった画家に、町長のおじいちゃんのそのまたおじいちゃんが描いてもらったんだと誰かが言っていた。実際きれいな絵だと思う。
なので夜な夜な忍び込んで盗んだ。コレクターに売れば良い額になるはずだ。カジノでつくった借金は、死ぬまでまともに働いても到底返せそうになかった。
「それにこんな片田舎よりもっとお前の価値を分かってくれる場所があるだろう。」
誰にともなく言い訳して、額ぶちに手をかけた。子どもの頃に心奪われた目を見張る色彩や聖母の神々しさは、いまや俺の手の中ですっかり失われていた。
10/30/2024, 11:52:43 PM